十五秒
雨が降っていた。 アパートのドアの前で、私はかばんの中を三回探した。
鍵はかばんの外のポケットに入れたはずだ。 でも、指に当たるのは財布とハンカチと、コンビニのレシートだけだった。 会社の机に忘れたのかもしれない。 ドアの前には屋根がなくて、髪も肩もぬれていった。
スマホで近くの鍵屋を探して、電話をかけたら、三十分で行きますと言われた。
その三十分が長かった。
鍵屋さんは白い車で来た。 五十歳ぐらいの人で、青い作業服を着ていた。 私の名前と部屋の番号を確かめてから、細い道具を鍵の穴に入れた。
十五秒だった。 かちゃ、と音がして、ドアが開いた。 私はやっと安心した。
部屋に入ると、玄関の靴箱の上に、私の鍵が置いてあった。 朝、靴をはく時にそこに置いたのだ。
「一万五千円になります」と鍵屋さんが言った。 それから、こう続けた。 「合鍵を一本作っておけば、千円ですよ」
