クリーニング屋の屋根の下
こうへいは自転車で弁当を配達している。 その日は、朝食を食べる時間がなかった。 九時の注文が三つ重なって、家を出るのが遅くなったからだ。
三軒目の家に向かう途中で、急に空が暗くなった。 信号を渡ったところで、強い雨が降り始めた。 傘は持っていない。 カバンの中の弁当がぬれたら、お金はもらえない。
こうへいは自転車を止めて、周りを見た。 近くに屋根のある所を探した。 ちょうど良い店はなかったが、適当な所でいい、と思った。 少し戻って、閉まっているクリーニング屋の前に自転車を入れた。 屋根が広くて、カバンは全然ぬれなかった。
雨は十五分でやんだ。 地面がまだぬれていたので、こうへいはいつものルートを変えて、坂の少ない道を選んだ。
弁当を渡すと、お客さんは遅かったねと言った。 こうへいは謝った。 それから、お客さんは袋を開けて、何も言わなくなった。 中の弁当は、店を出た時と同じように、きれいなままだった。
