文福茶がま(二の二)
「わたしは文福茶がまといって、ほんとうはたぬきの化けた茶がまですよ。じつはある日野原へ出て遊んでいるところを五、六人の男に追いまわされて、しかたなしに茶がまに化けて草の中にころがっていると、またその男たちが見つけて、こんどは茶がまだ、茶がまだ、いいものが手に入った。これをどこかへ売りとばして、みんなでうまいものを買って食べようと言いました。それでわたしは古道具屋に売られて、店先にさらされて、さんざん窮屈な目にあいました。その上何も食べさせてくれないので、おなかがすいて死にそうになったところを、お寺の和尚さんに買われて行きました。お寺では、やっと手おけに一ぱいの水をもらって、一口にがぶ飲みしてほっと息をついたところを、いきなりいろりにのせられて、お尻から火あぶりにされたのにはさすがにおどろきました。もうもうあんな所はこりこりです。あなたは人のいい、しんせつな方らしいから、どうぞしばらくわたしをうちに置いて養って下さいませんか。きっとお礼はしますから。」
「うん、うん、置いてやるぐらいわけのないことだ。だがお礼をするってどんなことをするつもりだい。」
「へえ。見世物でいろいろおもしろい芸当をして見せて、あなたにたんとお金もうけをさせて上げますよ。」
「ふん、芸当っていったいどんなことをするのだい。」
「さあ、さし当たり綱渡りの軽わざに、文福茶がまの浮かれ踊りをやりましょう。もうくず屋なんかやめてしまって、見世物師におなんなさい。あしたからたんとお金がもうかりますよ。」
こう言われてくず屋はすっかり乗り気になってしまいました。 そして茶がまのすすめるとおりくず屋をやめてしまいました。
そのあくる日夜が明けると、くず屋はさっそく見世物のしたくにかかりました。 まず町の盛り場に一軒見世物小屋をこしらえて、文福茶がまの綱渡りと浮かれ踊りの絵をかいた大看板を上げ、太夫元と木戸番と口上言いを自分一人で兼ねました。
