文福茶がま(一の三)
和尚さんは少し「へんだ。」と思いましたが、ほかに変わったこともないので、安心してまた水を入れて、いろりにかけました。 すると、しばらくしてお尻があたたまってくると、茶がまはだしぬけに、「あつい。」と言って、いろりの外へとび出しました。 おやと思う間にたぬきの頭が出て、四本の足が出て、太いしっぽがはえて、のこのことおざしきの中を歩き出しましたから、和尚さんは、「わあッ。」と言って、思わずとび上がりました。
「たいへん、たいへん。茶がまが化けた。だれか来てくれ。」
和尚さんがびっくりして大きな声で呼び立てますと、小僧さんたちは、「そら来た。」というので、向こう鉢巻きで、ほうきやはたきを持ってとび込んで来ました。 でももうその時分にはもとの茶がまになって、布団の上にすましていました。 たたけばまた「かん。かん。」と鳴りました。
和尚さんはまだびっくりしたような顔をしながら、「どうもいい茶がまを手に入れたと思ったら、とんだものをしょい込んだ。どうしたものだろう。」 と考えていますと、門の外で、「くずい、くずい。」という声がしました。
「ああ、いいところへくず屋が来た。こんな茶がまはいっそくず屋に売ってしまおう。」 和尚さんはこう言って、さっそくくず屋を呼ばせました。
くず屋は和尚さんの出した茶がまを手に取って、なでてみたり、たたいてみたり、底をかえしてみたりしたあとで、「これはけっこうな品物です。」 と言って、茶がまを買って、くずかごの中に入れて持って行きました。
