同じ写真のレコード
中野の古いレコード屋は、狭い階段を下りた地下にあった。
「昔、この店によく来たことがあるんだ」とおじいさんが言った。 「五十年ぐらい前だけどな。」
りくは、棚を見ながら奥へ歩いた。 知らない歌手の名前が、たくさん並んでいる。 店の奥から、静かな音楽が流れていた。
「おばあちゃんへのプレゼント、これにしよう」と、おじいさんが一枚のレコードを取った。 青い海の写真のジャケットだった。 「おばあちゃんが好きだった歌手だよ。ああ、懐かしいなあ。」
りくはスマホで調べてみた。 「おじいちゃん、それ、去年出た新しいほうみたい。写真は同じだけど、中の歌が違うよ。」
「え、そうなのか。」
おじいさんは、もう一度棚を見た。 同じ写真のレコードが、二枚並んでいた。 りくは古いほうを取って、おじいさんに渡した。
「危なかった。間違うところだった」と、おじいさんが笑った。 「ありがとう。」
「でも、どうして古いほうがいいの。」
「おばあちゃんと初めて会った日、この店で、このレコードをかけてもらったんだよ。同じ歌じゃないと、意味がないだろう。」
