雷のさずけもの(一の一)
むかし、尾張国に一人のお百姓がありました。 ある暑い夏の日にお百姓は田の水を見に回っていますと、急にそこらが暗くなって、真っ黒な雲が出てきました。 するうち雲の中からぴかりぴかり稲妻がはしり出して、はげしい雷がごろごろ鳴り出しました。 やがてひどい大夕立になりました。 お百姓は「桑原、桑原。」と唱えながら、頭をかかえて一本の大きな木の下に逃げ込んで、夕立の通りすぎるのを待っていました。 すると間もなく、がらがらッと、天も地もいっしょに崩れ落ちたかと思うようなすさまじい音がしました。 お百姓は思わず耳を押さえて、地の上につっ伏しました。
しばらくしてこわごわ起き上がってみますと、つい五六間先に大きな光り物がころげていました。 お百姓はふしぎに思って、そっとそばに寄ってみますと、それは奇妙な顔をして、髪の毛の逆立った、体の真っ赤な、子供のような形のものでした。
これは雷があんまり調子に乗って、雲の上を駆け回るひょうしに、足を踏みはずして、地の上に落ちて、目を回したのでした。
