電信柱と妙な男(三)
「なるほど、おもしろい。」といって、妙な男は考えていたが、「だめだ。だめだ。河ぶちなんかいけない。道が悪くて、やぶがたくさんあって困る。おまえさんは無神経も同然だからいいが、私は困る。」と、顔をしかめて不賛成をとなえだした。
電信柱は、背を二重にして腰をかがめていたが、「そんなら、いいことが思いあたった。おまえさんは身体が小さいから、どうだね、町の屋根を歩いたら、私は、こうやって軒について歩くから。」といった。
妙な男は、黙ってうなずいていたが、「うん、それはおもしろそうじゃ、私を抱いて屋根の上へのせてくれ。」と頼みました。
電信柱は、軽々と妙な男を抱き上げて、ひょいとかわら屋根の上に下ろしました。 妙な男は、ああなんともいえぬいい景色だと喜んで、屋根を伝って話しながら歩きました。 するとこのとき、雲間から月が出て、おたがいに顔と顔とがはっきりとわかりました。
たちまち妙な男は大きな声で、「やあ、おまえさんの顔色は真っ青じゃ。まあ、その傷口はどうしたのだ。」と、電信柱の顔を見てびっくりしました。
