夜中の蛇口
夜中の二時、水の音で田中さんは目が覚めた。 台所の蛇口から、水が一滴ずつ落ちている。 ぽたん、ぽたん。
蛇口を右にも左にも回してみたが、水漏れは止まらない。 強く閉めたら、かえって音が大きくなった。 田中さんはタオルを蛇口に巻いて、下にボウルを置いた。 音は小さくなったが、消えなかった。
大家さんに電話しなければならない。 でも、時計はもう二時半だ。 こんな時間に電話はできない。 田中さんは布団の中で、水の音を数えながら朝を待った。
七時になるのを待って電話をかけると、大家さんは五分で来てくれた。 工具箱から小さいゴムの部品を出して、蛇口を直した。 修理は十分もかからなかった。
「これ、パッキンっていうんです。百円ぐらいのものですよ」と大家さんが言った。 それから、田中さんの顔を見てこう続けた。 「うち、この建物の一階なんです。次は夜中でも呼んでくださいね」
