保健室のごろごろ
五時間目の途中で、ゆづが保健室に入ってきた。 おなかを手で押さえている。
「先生、おなかが痛い」
ゆづはサンダルを脱いで、ベッドに座った。
「どこが痛いか、指ではっきり教えて」と宮武が言った。
ゆづはおへその上を指した。
「胸はどきどきする?」
「どきどきは心臓でしょ。あれは体育の後」
「じゃあ、おなかはごろごろ鳴ってる?」
「鳴ってる。さっきから、ずっとごろごろ」
「誰かにいじめられてない?」
「ううん。おなかだけ」
「今日の給食は?」と宮武が聞いた。
「サケ。魚は食べないから、牛乳だけ飲んだ。サケは、ゴミといっしょに捨てた」
「魚が嫌いなのはかまわないけど、捨てるのはだめ」
「うん」
「朝ごはんは」
「ジャムのサンドイッチ、半分。昨日ごちそうを食べすぎて、朝はいらなかったの」
「昨日の夜から、パン半分と牛乳だけね。中に何も入っていないので、鳴るの。それを、ぺこぺこっていうんだよ」
「ぺこぺこは痛くないでしょ」
「ぺこぺこすぎると痛くなる。教室にパン、残ってるでしょう。取っておいで。ここで食べていいから」
十分後、ゆづはパンを持って戻ってきた。 にこにこしている。
「まだごろごろしてる?」
「してない」
宮武は献立表を見て言った。 「来週の火曜も、サケだよ。その日は、パンを二つもらっておきなさい」
