和尚さんと小僧(一の二)
夕方になって、和尚さんが帰って来てみますと、中は真っ暗で、明りもついていませんでした。 和尚さんはおこって、
「こらこら、小僧、何をしている。」
とどなりました。 すると小僧は布団の中から、虫の鳴くような声を出して、
「和尚さん、ごめん下さい。わたしは死にます。もうとても助かりません。死んだあとは、かわいそうだと思って、お経の一つも読んで下さい。」
といいました。
和尚さんは、だしぬけに妙なことをいわれて、びっくりしました。
「小僧、小僧、いったいどうしたのだ。」
「きょう、和尚さんのたいじなお湯飲みを洗っていますと、いきなり猫がじゃれかかって来て、そのひょうしに手をすべらして、お湯飲みを落としてこわしてしまいました。もうこれは死んで申しわけをするよりほかはないと思って、つぼの中の毒薬を出して、残らず食べました。もう毒が体中に回って、間もなく死ぬでしょう。どうかかんにんして、お経だけ読んでやって下さい。ああ、苦しい、ああ、苦しい。」
といいながら、おいおい、おいおい、泣きました。
