新しいパスワード
月曜日の朝、会社員の男はパソコンの前で止まった。 パスワードが通らない。 三回間違えると、画面は静かに閉じてしまった。
仕方なく、「パスワードをお忘れの方はこちら」を押す。 メールが届く。 リンクを押す。 新しいパスワードを作る画面が開いた。
「前と同じパスワードは使えません」
男は、前の物の最後に「2」を足した。
「もっと複雑にしてください」
大文字を足した。 記号も足した。 生まれた年も足した。 ようやく「変更しました」と出たときには、十分が過ぎていた。
男は息をついて、コーヒーを取りに立った。 戻ってきて、席に座り、指を置いて、そこで動きが止まった。
今作ったばかりのパスワードを、もう覚えていない。
画面には、さっきと同じ文字が並んでいる。 「パスワードをお忘れの方はこちら」。 男は、それを押した。
今月に入って、三度目である。
