松山鏡(三の一)
その後おとうさんは人にすすめられて、二度めのおかあさんをもらいました。
おとうさんは娘に、
「こんどのおかあさんもいいおかあさんだから、亡くなったおかあさんと同じように、だいじにして、いうことを聴くのだよ。」
といいました。
娘はおとなしくおとうさんのいうことを聴いて、
「おかあさん、おかあさん。」
といって慕いますと、こんどのおかあさんも、先のおかあさんのように、娘をよくかわいがりました。 おとうさんはそれを見て、よろこんでいました。
それでも娘はやはり時々、先のおかあさんがこいしくなりました。 そういう時、いつもそっと一間に入って、れいの鏡を出してのぞきますと、鏡の中にはそのたんびにおかあさんが現れて、
「おや、お前、おかあさんはこのとおり達者ですよ。」
というように、にっこり笑いかけました。
こんどのおかあさんは、時々娘が悲しそうな顔をしているのを見つけて心配しました。 そしてそういう時、いつも一間に入り込んで、いつまでも出てこないのを知って、よけい心配になりました。 そう思って娘に聴いても、
「いいえ、何でもありません。」
と答えるだけでした。
でもおかあさんは、何だか娘が自分にかくしていることがあるように疑って、だんだん娘がにくらしくなりました。 それである時おとうさんにその話をしました。 おとうさんもふしぎがって、
「よしよし、こんどおれが見てやろう。」
といって、ある日そっと娘の後から一間に入って行きました。 そして娘が一心に鏡の中に見入っているうしろから、出し抜けに、
「お前、何をしている。」
