向かいの家
トムは地下鉄の出口で電話をかけた。 地図には、宮下の家がない。
「今、駅の外です。この辺り、道の名前がありません」
「大丈夫。向こうの交差点まで歩いて」と宮下が言った。
「交番が見えたら、その手前を左に曲がるの。車が多いから、危ないよ」
トムは曲がった。 「喫茶店があります」
「その向かいの道に入って。同じ家が五つ並んでるでしょ。その真ん中だよ」
トムは左の五つの家を見て、真ん中の家の前に立った。 周りに人はいない。 門の所に、可愛い犬がいた。 「着きました。犬がいますね」
「うちに犬はいないよ」と宮下が笑った。 「青い上着、窓から見えてる。私の家は、その道の向かい側」
トムは後ろを向いた。 向かいの家の窓で、宮下が手を振っていた。
