金の輪(一の二)
ひとりしょんぼりとして、太郎は家のまえに立っていましたが、畑には去年とりのこした野菜などが、新しくみどり色の芽をふきましたので、それを見ながら細い道を歩いていました。
すると、よい金の輪のふれあう音がして、ちょうどすずを鳴らすようにきこえてきました。
かなたを見ますと、往来の上をひとりの少年が、輪をまわしながら、走ってきました。 そして、その輪は金色に光っていました。 太郎は目を見はりました。 かつてこんなに美しく光る輪を見なかったからであります。 しかも、少年のまわしてくる金の輪は二つで、それがたがいにふれあって、よい音色をたてるのであります。 太郎はかつてこんなに手ぎわよく輪をまわす少年を見たことがありません。 いったいだれだろうと思って、かなたの往来を走って行く少年の顔をながめましたが、まったく見おぼえのない少年でありました。
この知らぬ少年は、その往来をすぎるときに、ちょっと太郎の方をむいて微笑しました。 ちょうど知った友だちにむかってするように、なつかしげに見えました。
