巣の下の板
四月の終わり、パン屋の入り口の上に、ツバメが巣を作り始めた。 毎年同じ場所だ。
「今年も来たか」とパン屋の主人が言った。 掃除は大変だし、下に出したパンの台にもふんが落ちる。
隣の花屋の店主も外に出てきた。 「うちの花にも落ちるんですよね」
「去年は板を付けたけど、あれじゃ小さかったな」
そこへ、毎朝来る年配のお客さんが通りかかった。 二人の話を聞いて、上を見上げてから言った。 「うちの母がね、ツバメが巣を作る店はその年よく売れるって言ってたのよ」
パン屋の主人も上を見た。 親のツバメが二羽、速く行ったり来たりしている。 もうすぐ卵の時期だ。
その日の午後、主人は大きい板を買ってきて、花屋の店主と一緒に巣の下に取り付けた。 ふんが道に落ちないように、前より三十センチ広くした。 年配のお客さんは、画用紙に字を書いて持ってきた。 「ツバメの子育て中です。下を通るときは気をつけてください」
その紙は、六月に子供たちが飛んでいったあとも、そのまま貼ってあった。
