夜明け前の一万羽
鹿児島県の北の端、出水市には広い田んぼが続いています。 稲刈りが終わった十月ごろ、その田んぼに北からツルが降りてきます。
ツルが来るのはシベリアや中国の北のほうからで、その距離はおよそ二千キロです。 何日もかけて、家族で少しずつ南へ飛んできます。
出水に集まるのはナベヅルとマナヅルという種類で、その数は毎年一万羽を超えます。 世界のナベヅルのほとんどが、この一つの平野で冬を過ごしているのです。 ツルは田んぼに残った米や、虫、小さな魚を食べます。 地元の人たちは、ツルが夜眠るために、水をはった田んぼを用意します。
ツル観察センターに行くと、二階の窓から田んぼ全体が見えます。 双眼鏡も借りられます。 近くの道路からも見えますが、車から降りて大きい音を出すと、ツルは遠くへ行ってしまいます。
一番いい時間は朝です。 まだ暗いうちに来て、静かに待っていてください。 空が明るくなると、何千羽ものツルが一度に鳴いて、田んぼから飛び立ちます。 あの声の大きさは、写真では分かりません。
三月になると、ツルは同じ道を通って北へ帰ります。 出水で会えるのは、その間だけです。
