春山秋山(一の二)
「ふん、そんならお前とわたしと、どちらが早く少女をもらうか競争をしよう。もしわたしが負ければ、この着物をぬいでお前に上げよう、そしてわたしの背の高さだけの大きなかめに酒をなみなみ盛って、海山のごちそうを一通りそろえて、お客に呼んでやろう。」といいました。
すると霞男はいよいよおもしろがって、「ようございますとも。そのかわり万一わたしが負けたら、にいさんの代わりに、わたしがごちそうをしましょう。」
こう約束をして別れました。
弟の神はそれからうちへ帰って、兄神と賭をしたことをおかあさんに話しますと、おかあさんは、「よしよし、わたしがその賭に勝たせて上げよう。」とおっしゃいました。
おかあさんはそれから、一晩のうちにたくさんの藤のつるで、着物と袴と、靴から靴下まで織って、編んで、縫って、その上にやはり藤のつるで、弓と矢をこしらえて下さいました。
弟の神は大そう喜んで、おかあさんのこしらえて下さった藤づるの着物や靴を体につけて、藤づるの弓矢を手に持ちました。 そして、うきうきうかれながら、野を越え山を越えて、少女の家へ急いで行きました。
