患者から見た関係
「面会の方は、こちらにご関係を書いていただきます」と三田村が言った。
「はい。入院しているのは姉です」とことみは言った。 「昨日、手術が済んで、来週には退院できるそうです」
「お姉さんですね。それはよかったです」と三田村がうなずいた。
「今日は父も来ます。店を留守にして来るので、少し遅れると思います」
「お父さんですね」
「それから兄が、仕事のあとで八時ごろ。遠慮して、いつも遅い時間に来るんです」
「お兄さんですね。面会は八時半までですから、大丈夫ですよ」
「あと、弟が一人。高校生で、部活のあとに来ます。真面目な子で、確か七時ごろになると思います」
「弟さんですね」と三田村は書いていった。 それから、手を止めた。 「すみません。この欄は、患者さんから見た関係を書くことになっていまして」
「え」
「お父さんは、お姉さんから見てもお父さんです。お兄さんも弟さんも同じです」と三田村は言った。 「変わるのは、一つだけです」
ことみは自分の名前の横を見た。 そこには「姉」と書いてあった。 線を引いて、その下に「妹」と書き直した。
「はい、妹さんですね」と三田村が言った。 「少し複雑ですよね。皆さん、一度は間違えます。お預かり致します」
四人分の欄を書いて、直したのは自分の分だけだった。
