来年の分
(日曜日の朝七時前。集合場所へ向かう坂道。)
圭一:おはようございます。……いい天気ですね。
愛美:おはようございます。正直に言うと、雨でよかったのに、と思ってました。
圭一:わかります。中止のメール、来ませんでしたね。
愛美:来ませんでした。三回確認しました。
圭一:日曜の七時ですよ。子どもの運動会より早いです。
愛美:うちの班、去年は川沿いでしたよね。草がひざまであって。
圭一:ありました。あと、会長のあいさつが二十分。
愛美:あれでいらいらしてる人、けっこういましたよ。
圭一:……あ。もしかして。
愛美:私です。軍手も忘れて、素手で草をつかんで、途中から手が痛くて。今年は二組持ってきました。
圭一:じゃあ一組ください。忘れました。
(七時。川沿いの広場。三十人ほどが集まっている。)
愛美:あれ、なんかいい匂いがしませんか。
圭一:向こうでお茶を配ってますね。……ドーナツもある。
愛美:グループ分けはどうなってるんですか。
圭一:適当みたいです。会長がゴミ袋を家に忘れたそうで、今、取りに帰ってます。
愛美:……じゃあ、まだ始まらないんですか。
圭一:始まりません。みんな座って話してますよ。
(二時間後。)
愛美:結局、草刈りは三十分で終わりましたね。
圭一:終わりましたね。そのあと一時間、魚屋さんの昔話を聞いてました。干物までもらって。
愛美:楽しかったです。こんな雰囲気だとは思ってませんでした。
圭一:僕、去年は終わってすぐ帰ったんです。だから知らなかった、このあとがあるって。
愛美:もったいない。来年もこの班がいいですね。
圭一:いいですね。……でも、ゴミ、まだ半分残ってますけど。
愛美:来年の分にしておきましょう。
