鬼六(三の二)
こう大工がいうと、鬼はおこって、
「何といういくじのないやつだ。 じゃあためしにおれの名を当ててみろ。 うまく言い当てたら、かんべんしてやらないものでもない。」
といいました。
そこで大工は、わざとまずでたらめに、
「大江山の酒顛童子。」
というと、鬼はあざ笑って、
「ちがう、ちがう。」
と首を振りました。 そこでまたでたらめに、
「愛宕山の茨木童子。」
というと、鬼はよけいおもしろそうに、
「ちがう、ちがう。」
といって笑いました。
それから、まだいくつも、いくつも、でたらめな名をいって、鬼がだんだん飽きて、こわい目玉をむいて、今にも飛びかかって来そうになったとき、大工はありったけの大きな声を張り上げて、
「鬼六。」
とどなりました。
「ちぇッ。山の神に教わったか。」
こういったとたん、ふっと鬼の姿は消えて無くなりました。
