空きがありません
その大学生は、同じ知らせを何度も見ていた。 「保存できる場所が、まもなくいっぱいになります」。
一度目は電車の中で消した。 二度目は授業中に消した。 五度目くらいからは、内容を読まずに消すようになった。 写真は三千枚あるが、どれも消したくない。 友達に「少し消せば」と言われても、「今度やる」と答えていた。
十一月の日曜日、その日が来た。
公園を歩いていると、一匹の猫が彼の前に座った。 そして急に後ろ足で立ち上がり、両手を上げて、そのまま三秒ほど止まった。
彼は急いでスマホを出し、カメラを開いた。 画面が白くなって、文字が出た。 「空きがありません」。
写真を一枚消した。 もう一度カメラを開いた。 猫はもう、いつもの猫に戻って、日なたで丸くなっていた。
その夜、彼は写真を三百枚消した。 一枚ずつ確かめながら消したので、三時間かかった。
今、スマホには十分な空きがある。 それから毎日、彼はあの公園を通っている。 猫はいつもそこにいる。 ただ座って、こちらを見ているだけだ。
