金太郎(二の三)
山うばもそう聞くと、たいそう喜んで、
「じつはこの子の亡くなりました父も、坂田というりっぱな氏を持った侍でございました。わけがございましてこのとおり山の中に埋もれておりますものの、よいつてさえあれば、いつか都へ出して侍にして、家の名をつがせてやりたいと思っておりました。そういうことでしたら、このとおりの腕白者でございますが、どうぞよろしくお願い申します。」
とさもうれしそうに言いました。
金太郎はそばで二人の話を聞いて、
「うれしいな、うれしいな。おれはお侍になるのだ。」
と言って、小踊りをしていました。
金太郎がいよいよ碓井貞光に連れられて都へ上るということを聞いて、熊も鹿も猿もうさぎもみんな連れ立ってお別れを言いに来ました。 金太郎はみんなの頭を代わりばんこになでてやって、
「みんな仲よく遊んでおくれ。」
と言いました。 みんなは、
「金太郎さんがいなくなってさびしいなあ。早くえらい大将になって、また顔を見せて下さい。」
と言って、名残惜しそうに帰っていきました。 金太郎はおかあさんの前に手をついて、
「おかあさん、では行ってまいります。」
と言いました。 そして、貞光のあとについて、とくいらしく出ていきました。
それから幾日も幾日もかかって、貞光は金太郎を連れて都へ帰りました。 そして頼光のおやしきへ行って、
「足柄山の奥で、こんな子供を見つけてまいりました。」
と、金太郎を頼光のお目にかけました。
「ほう、これはめずらしい、強そうな子供だ。」
と頼光は言いながら、金太郎の頭をさすりました。
「だが金太郎という名は侍にはおかしい。父親が坂田というのなら、今から坂田金時と名乗るがいい。」
そこで金太郎は坂田金時と名乗って、頼光の家来になりました。 そして大きくなると、えらいお侍になって、渡辺綱、卜部季武、碓井貞光といっしょに、頼光の四天王と呼ばれるようになりました。
