金太郎(二の一)
帰って行く道々も、森の中でかけっくらをしたり、岩の上で鬼ごっこをしたりして遊び遊び行くうちに、大きな谷川のふちへ出ました。 水はごうごうと音を立てて、えらい勢いで流れて行きますが、あいにく橋がかかっていませんでした。 みんなは、
「どうしましょう。あとへ引き返しましょうか。」
と言いました。 金太郎はひとりへいきな顔をして、
「なあにいいよ。」
と言いながら、そこらを見まわしますと、ちょうど川の岸に二かかえもあるような大きな杉の木が立っていました。 金太郎はまさかりをほうり出して、いきなり杉の木に両手をかけました。 そして二、三度ぐんぐん押したと思うと、めりめりとひどい音がして、木は川の上にどっさりと倒れかかって、りっぱな橋ができました。 金太郎はまたまさかりを肩にかついで、先に立って渡っていきました。 みんなは顔を見合わせて、てんでんに、
「えらい力だなあ。」
とささやき合いながら、ついて行きました。
その時向こうの岩の上にきこりが一人かくれていて、この様子を見ていました。 金太郎がむぞうさに、大きな木をおし倒したのを見て、目をまるくしながら、
「どうもふしぎな子供だな。どこの子供だろう。」
と独り言を言いました。 そして立ち上がって、そっと金太郎のあとについて行きました。 うさぎや熊に別れると、金太郎は一人で、また身軽にひょいひょいと谷を渡ったり、崖を伝わったりして、深い深い山奥の一軒家に入っていきました。 そこいらには白い雲がわき出していました。
きこりはそのあとからやっと木の根をよじたり、岩角につかまったりして、ついて行きました。 やっとうちの前まで来て、きこりが中をのぞきますと、金太郎はいろりの前に座って、おかあさんの山うばに、熊や鹿とすもうを取った話をせっせとしていました。 おかあさんもおもしろそうに、にこにこ笑って聞いていました。
