かちかち山(一の一)
むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがありました。 おじいさんがいつも畑に出て働いていますと、裏の山から一ぴきの古だぬきが出てきて、おじいさんがせっかく丹精をしてこしらえた畑のものを荒らした上に、どんどん石ころや土くれをおじいさんのうしろから投げつけました。 おじいさんがおこって追っかけますと、すばやく逃げて行ってしまいます。 しばらくするとまたやって来て、あいかわらずいたずらをしました。 おじいさんも困りきって、わなをかけておきますと、ある日、たぬきはとうとうそのわなにかかりました。
おじいさんは躍り上がって喜びました。
「ああいい気味だ。とうとうつかまえてやった。」
こう言って、たぬきの四つ足をしばって、うちへかついで帰りました。 そして天井のはりにぶら下げて、おばあさんに、「逃がさないように番をして、晩にわたしが帰るまでにたぬき汁をこしらえておいておくれ。」と言いのこして、また畑へ出ていきました。
たぬきがしばられてぶら下げられている下で、おばあさんは臼を出して、とんとん麦をついていました。 そのうち、「ああくたびれた。」とおばあさんは言って、汗をふきました。 するとそのときまで、おとなしくぶら下がっていたたぬきが、上から声をかけました。
「もしもし、おばあさん、くたびれたら少しお手伝いをいたしましょう。その代わりこの縄をといて下さい。」
