名古屋から来るのは兄です
電話が鳴ったとき、部長は出かけていた。 柏木が代わりに取った。
「柏木さん、相原です。部長に伝言をお願いします。父が昨日倒れて、入院したんです。それほど悪くはないんですが、金曜日まで休ませてください」
柏木はメモを取りながら聞いた。 「今、病院にどなたか」
「母が付いています。明日、兄が名古屋から来ます。週末は姉が世話を代わってくれるので、月曜日には出られると思います」
「では、確認します。お父さんが入院、お母さんが病院にいて、明日、お姉さんが名古屋から」
「あ、兄です。名古屋から来るのは兄で、姉は週末です」
「失礼しました。お兄さんが明日、お姉さんが週末ですね。病院まで、どうやって行くんですか」
「電車で二回乗り換えるんです。不便な所で。今日は主人が車で送ってくれました」
「ご主人が」と柏木は言った。 少し黙ってから、続けた。 「うちも去年、父が同じでした。こういう時は仕方がないですよ。できるだけ休んでください」
「柏木さんのお父さんも」
「はい。今はもう元気です」
電話を切ってから、柏木は携帯電話を出して、父にかけた。
