カプセルホテルの四十年
日本で最初のカプセルホテルは、一九七九年に大阪で生まれた。 狭くても眠れる場所を、できるだけ安く、たくさん作る。 それが最初の考え方だった。
当時の客は、ほとんどが仕事帰りの会社員だった。 終電を逃した人、出張で急に泊まることになった人。 ホテルを探す時間もお金もない。 だから、寝るためだけの箱があればよかった。 実際、長い間、カプセルホテルは「泊まりたい場所」ではなく「仕方なく泊まる場所」だった。
変わり始めたのは、二〇一〇年ごろからだ。 外国から来た旅行者が、宿をインターネットで検索していて、この不思議な宿を見つけた。 安いだけではない。 一人分の空間がきちんと区切られていて、風呂が広く、駅から近い。 写真で見ると、宇宙船のようにも見える。 旅の話として、これほど面白い宿はなかった。
宿のほうも変わった。 女性専用のフロアができ、階ごとに鍵がかかるようになった。 ベッドの硬さや枕の種類を選べる所もある。 中には、天井が高くて中で座れる型もある。 もう、我慢して泊まる場所ではない。
もちろん、隣の音は聞こえるし、荷物は広げられない。 それでも、予約の画面を開く人が期待しているのは、安さだけではないのだろう。 一泊分の、ちょうどいい狭さ。 それを一度味わうと、次の旅でもまた探してしまう。
