五百円のアルバム
日曜日の朝、ゆかは近くの神社で開かれるフリーマーケットに行った。
古い本や食器が並んでいる店で、青いアルバムを見つけた。 開けてみると、知らない家族の写真がたくさん入っていた。 海で笑っている子供、着物を着たおばあさん、生まれたばかりの赤ちゃん。
「それ、五百円でいいよ」と店の田村さんが言った。
「これ、どこで買ったんですか」
「先月、三鷹の古い家を片付けたときに出たんだ。家具と一緒に、まとめて売られていたよ」
ゆかはびっくりした。 古い写真を売っている店は見たことがあるが、こんなに大切そうなアルバムが五百円で売られているのは初めてだった。
「家族の人は、いないんですか」
「さあ。誰も取りに来なかったよ」
ゆかはお金を払って、アルバムをもらって帰った。 家で、一枚ずつゆっくり見た。 誰も自分に紹介してくれない人たちの顔を、何度も見た。
最後のページの写真を裏返したとき、鉛筆で小さく字が書いてあった。 「昭和四十二年 夏 三鷹 中村」
ゆかは電話帳を開けた。 三鷹の中村さんは、まだ二十軒以上あった。 ゆかは一番上の番号から、電話をかけ始めた。
