八分
夜の十時、水族館の電気はほとんど消えている。 客はもういない。 ポンプの音だけが、静かに聞こえる。 だいごは懐中電灯を持って、いつもの見回りを始めた。
サンゴの水槽の前で、だいごは足を止めた。 タコが動いている。 昼間、飼育員が小さなガラスの瓶を水槽に入れた。 中にはカニが一匹入っている。 ふたは、子どもが開けられないタイプだ。 押しながら回さないと、開かない。
タコは瓶に体を巻きつけて、ふたを回した。 開かない。 もう一度回した。 やっぱり開かない。 それから、タコは腕を二本使い始めた。 一本でふたを押して、もう一本で回す。
かちっ、と小さな音がした。 ふたが外れて、水の中をゆっくり落ちていった。 カニは逃げようとしたが、間に合わなかった。
だいごは腕時計を見た。 八分。 先週は二十分かかっていた。
早くなったなあ、とだいごは思った。 だいごはノートに時間を書いて、次の水槽へ歩いていった。
