文福茶がま(一の二)
その音に和尚さんは目をさまして、「やかましい、何をさわぐのだ。」と目をこすりながらしかりました。
「でも和尚さん、ごらんなさい。ほら、あのとおり茶がまが歩きますよ。」 こうてんでんに言うので、和尚さんも小僧さんたちの指さす方を見ますと、茶がまにはもう頭も足もしっぽもありません。 ちゃんともとの茶がまになって、いつの間にか布団の上にのって、すましていました。 和尚さんはおこって、「何だ。ばかなことを言うにもほどがある。」
「でもへんだなあ。たしかに歩いていたのに。」 こう言いながら小僧さんたちはふしぎそうに、寄って来て茶がまをたたいてみました。 茶がまは「かん。」と鳴りました。
「それみろ。やっぱりただの茶がまだ。くだらないことを言って、せっかくいい心持ちに寝ているところを起こしてしまった。」
和尚さんにひどくしかられて、小僧さんたちはしょげて、ぶつぶつ口こごとを言いながら引っ込んでいきました。
そのあくる日和尚さんは、「せっかく茶がまを買って来て、ながめてばかりいてもつまらない。今日はひとつ使いだめしをしてやろう。」 と言って、茶がまに水をくみ入れました。 すると小さな茶がまのくせに、いきなり手おけに一ぱいの水をがぶりと飲んでしまいました。
