コンビニまで
十二時十五分、駅の外は雨だった。 ちなつは、傘を持っていないことに気づいた。
屋根の下に、同じ電車を降りたらしい男の人が立っていた。 二人とも、最後の電車に間に合わなかった。
「タクシー、並んでますね」とその人が言った。
「あそこ、三十分は待ちますね」とちなつは言った。
「僕は歩きます。二十分ぐらいなので」
「私も歩こうかな」とちなつは言った。 「でも、傘がなくて」
その人は傘を開いて、少し横にずらした。 「途中まで、どうぞ。コンビニまで行けば、傘、売ってますよ」
二人は歩き出した。 雨の音が大きくて、話しにくかった。 それでも、仕事の話を少しずつした。
コンビニで、ちなつは一番安い傘を買った。
「じゃあ、ここで。ちなつです」
「こうたです。同じ電車、よく乗ってると思います」とこうたは言った。
二人は反対の方向へ歩き出した。 少し行って振り返ると、こうたの右の肩だけが、雨で黒くなっていた。
「傘、ありがとうございました」
こうたは振り返らずに、手を上げた。
