修業三日目
朝の四時、僕はまだ眠かった。 パン屋の修業を始めて、三日目だった。
店長は、パンの生地を丸めるやり方を教えてくれた。 「手のひらで、こう」と店長が言った。 店長の手の中で、生地はきれいな丸になった。 簡単そうに見えた。
僕もやってみた。 でも生地は手にくっついて、丸くならない。 二つ目も、うまく丸められなかった。 三つ目は力を入れすぎて、平たくなってしまった。
「りく君、パンを作ったことは?」と店長が聞いた。
「家で一度だけ、ホットケーキを焼いたことがあります」
店長は笑って、僕の手に粉を少しかけた。
「先に粉をつけておくんだ。それから、強く押さない。生地の重さだけで丸める」
もう一度やってみた。 今度は、生地が手から離れた。 丸い。 ちゃんと丸められた。
「できました」と僕は言った。
「うん、それがコツ」と店長は言って、次の生地を僕の前に置いた。 「あと五十個ね。焼き上がるのは六時だから」
十年たった今も、僕は毎朝四時に起きている。 手に粉をつけるのは、今でも一番最初にすることだ。
