一週間分の質問
さくら:もしもし、お母さん?今、大丈夫?
母:あら、珍しい。どうしたの、こんな時間に。
さくら:あのね、報告があるんだけど。……私、結婚することにしたの。
母:えっ。
さくら:もしもし?聞こえてる?
母:待って、待って。いつ?どこで?相手は誰?いくつの人?仕事は何してるの?
さくら:一気に聞かないでよ。
母:だって、あなた、去年まで「しばらく一人でいい」って言ってたじゃない。
さくら:うん、まあ、そうなんだけど。先月、プロポーズされて。式は春に挙げることにしたの。
母:春!じゃあ、もう半年もないじゃない。会場は?ドレスは?お父さんのスーツ、入るかしら。
さくら:会場はこれから。……お母さん、ちょっと落ち着いて。
母:落ち着いてるわよ。お父さんなんて、あなたの顔を見たら泣いちゃうかもしれないわね。
さくら:泣かないでしょ、あの人は。
母:どうかしら。……ねえ、さくら。一つだけ、言っていい?
さくら:何?
母:お母さん、実はね、もう知ってたの。
さくら:……えっ?
母:先週、彼から家に電話があったのよ。「お嬢さんと結婚させてください」って。声が震えててね、緊張してるのがこっちまで伝わってきたわ。
さくら:聞いてない。何それ。
母:さくらには言わないでくださいって、頼まれてたんだもの。お父さんなんて、もう近所の人に話しちゃったそうよ。
さくら:え、しゃべってるの、あの人。
母:ご近所さんは、みんな知ってるわよ。
さくら:私が報告する意味、あった?
母:あったわよ。あなたの口から聞きたかったんだから。
さくら:……だから、さっきの質問、あんなに早かったんだ。
母:そうよ。一週間分、たまってたの。
