浦島太郎(三の二)
「まあ、それはざんねんでございますこと。でもあなたのお顔をはいけんいたしますと、この上おひきとめ申しても、むだのようにおもわれます。ではいたし方ございません、行っていらっしゃいまし」
こうかなしそうにいって、乙姫さまは、奥からきれいな宝石でかざった箱を持っておいでになって、
「これは玉手箱といって、なかには、人間のいちばんだいじなたからがこめてございます。 これをおわかれのしるしにさし上げますから、お持ちかえりくださいまし。 ですが、あなたがもういちどりゅう宮へ帰ってきたいとおぼしめすなら、どんなことがあっても、けっしてこの箱をあけてごらんになってはいけません」
と、くれぐれもねんをおして、玉手箱をおわたしになりました。 浦島は、
「ええ、ええ、けっしてあけません」
といって、玉手箱をこわきにかかえたまま、りゅう宮の門を出ますと、乙姫さまは、またおおぜいの腰元をつれて、門のそとまでお見送りになりました。
もうそこには、れいのかめがきて待っていました。
浦島はうれしいのとかなしいのとで、胸がいっぱいになっていました。 そしてかめの背中にのりますと、かめはすぐ波を切って上がって行って、まもなくもとの浜べにつきました。
「では浦島さん、ごきげんよろしゅう」
と、かめはいって、また水のなかにもぐって行きました。 浦島はしばらく、かめの行くえを見送っていました。
