浦島太郎(二の二)
ひととおり見てしまうと、乙姫さまは、
「こんどは四季のけしきをお目にかけましょう」
といって、まず、東の戸をおあけになりました。 そこは春のけしきで、いちめん、ぼうっとかすんだなかに、さくらの花が、うつくしい絵のように咲き乱れていました。 青青としたやなぎの枝が風になびいて、そのなかで小鳥がないたり、ちょうちょうが舞ったりしていました。
次に、南の戸をおあけになりました。 そこは夏のけしきで、垣根には白いうの花が咲いて、お庭の木の青葉のなかでは、せみやひぐらしがないていました。 お池には赤と白のはすの花が咲いて、その葉の上には、水晶の珠のように露がたまっていました。 お池のふちには、きれいなさざ波が立って、おしどりやかもがうかんでいました。
次に西の戸をおあけになりました。 そこは秋のけしきで花壇のなかには、黄ぎく、白ぎくが咲き乱れて、ぷんといいかおりを立てました。 むこうを見ると、かっともえ立つようなもみじの林の奥に、白い霧がたちこめていて、しかのなく声がかなしくきこえました。
いちばんおしまいに、北の戸をおあけになりました。 そこは冬のけしきで、野には散りのこった枯葉の上に、霜がきらきら光っていました。 山から谷にかけて、雪がまっ白に降り埋んだなかから、柴をたくけむりがほそぼそとあがっていました。
浦島は何を見ても、おどろきあきれて、目ばかり見はっていました。 そのうちだんだんぼうっとしてきて、お酒に酔った人のようになって、何もかもわすれてしまいました。
