忘れ物の箱
二十年ぶりに、小学校へ行った。 同窓会は六時からだ。 少し早く着いたので、僕は校舎の中を歩いてみた。
三年二組の教室に入った。 机も椅子も新しくなっていて、僕が座っていた席はもうなかった。
次に体育館をのぞいた。 壁の絵は変わっていた。 それでも、床のにおいだけは昔と同じだった。
廊下の隅に、古い段ボール箱が置いてあった。 横に「忘れ物」と書いてある。 中を見て、僕はびっくりした。 青い筆箱が入っていたのだ。 ふたに白いテープが貼ってあって、「たくや」と下手な字で書いてある。 僕の字だった。
四年生のとき、僕はこの筆箱をなくしてしまった。 家に帰って母に怒られたことがある。
「先生、これ、僕のです」
後ろから来た先生に見せた。 先生はもう七十歳を過ぎているが、まだまだ元気だ。
「あら、本当だ」と先生が言った。 「その箱ね、捨てられないのよ。名前が書いてあったら、いつか取りに来る子がいるかもしれないでしょう」
僕は筆箱を開けた。 中には短い鉛筆が二本と、動かなくなった時計のおもちゃが入っていた。
「先生、二十年かかりましたけど、取りに来ました」
先生は笑って、「じゃあ、持って帰りなさい」と言った。
