押し入れの奥の箱
来月、両親が小さいアパートに引っ越す。 部屋が三つから一つになるので、荷物を半分に減らさなければならない。 土曜日、私と弟の翔太は実家に集まって、押し入れを片付けた。
最初に出てきたのは、翔太の野球のトロフィーだった。
「これ、いる?」
「いらない」と翔太は言った。 「小学生のだよ」
私は写真を撮っておいて、トロフィーを捨てる箱に入れた。
次に、私の中学の教科書が出てきた。 翔太が笑った。
「姉ちゃん、これ役に立つ?」
「立たない」
そうやって、私たちは二時間で三つの袋をいっぱいにした。 物が減れば、部屋は広くなる。 それは分かっている。 でも、広くなるほど、私は少しさびしくなった。
最後に、押し入れの一番奥から、小さい段ボール箱が出てきた。 母の字で「直美・翔太」と書いてある。 開けると、私たちの通知表と、下手な絵と、幼稚園のときの写真が入っていた。 私たちが捨てたと思っていたものを、母が全部取っておいたのだ。
「これ、どうする」と翔太が聞いた。
捨てなければならないものは、まだたくさんある。 でも、この箱だけは新しいアパートに持っていくことにした。
