課長へのお願い
昼休みが終わる少し前、中村さんは課長のところへ行った。 少し緊張しているようだった。
「課長、今、少しお時間よろしいでしょうか」
「ああ、中村さん。どうぞ、座って」と、課長は書類から顔を上げた。
中村さんは、深く息をしてから話し始めた。 「実は、来月から、勤務時間のことでご相談がありまして」
「勤務時間?」
「はい。子どもの保育園の送りがありまして、朝、少しだけ遅く出社させていただくことは、できないでしょうか」
課長は、しばらく考えていた。 中村さんは、断られるのではないかと、心配そうだった。
「なるほど。事情は理解しました」と、課長は言った。 「うちのような小さいチームだと、一人が抜けると、大変な時もある。でも、家族のことなら、優先すべきだよ」
「では……」
「朝の三十分なら、問題ないよ。その分、時間を工夫すれば、仕事は十分回るはずだ。働き方は、人によって違っていい。困ったときは、周りの者に頼めばいいんだ」
中村さんの表情が、ぱっと明るくなった。 「ありがとうございます。ご理解いただけて、本当に助かります」
「気にしないで。働きやすい職場を作るのも、私の仕事だからね」と、課長は笑った。 「無理のない範囲で、お願いしますよ」
