から揚げ二十個
(金曜日の夜。アパートの部屋。テーブルの上にスマホが置いてある。)
後輩:先輩、注文しときました。二十分くらいで来るそうです。
先輩:おう、ありがとう。俺、から揚げ定食な。
後輩:はい。……あれ。
先輩:どうした。
後輩:画面に「から揚げ二十個」って出てます。
先輩:定食は。
後輩:入ってません。から揚げだけです。二十個。
先輩:どうやったらそうなるんだよ。
後輩:たぶん、数を選ぶところで指が滑ったんだと思います。今から消せますかね。
(先輩がスマホを取って、しばらく画面を見る。)
先輩:無理だな。もう店が作り始めてる。
後輩:すみません。全部僕が払います。
先輩:いや、その判断は早い。まず、どうやって食べるかを考えろよ。
後輩:じゃあ、下の部屋の友達を呼びましょうか。三人で来てくれたら何とかなります。
先輩:いいな。呼べ。
後輩:……あ、今日から三人とも実家だそうです。
先輩:じゃあ、二人でいくつだ。
後輩:十個ずつです。
先輩:ご飯は炊けるか。
後輩:炊きます。二人分。
(三十分後。テーブルの上に、から揚げの山ができている。)
後輩:先輩、これ、思ったより大きいです。一個が。
先輩:まあ食え。
後輩:お金は、やっぱり僕が全部出します。
先輩:半分でいい。俺も十個食うんだから、俺の分は俺が出す。
後輩:ありがとうございます。
先輩:その代わり、明日の朝も、これな。
後輩:朝も、から揚げですか。
先輩:昼もだ。
