閉店二十分前
智子:いらっしゃいませ。
愛美:あ、すみません。お店、何時までですか。
智子:八時までです。あと二十分ありますよ。
愛美:二十分か……。間に合うかな。
智子:何かお探しですか。
愛美:日曜日に、彼氏のご両親に紹介されるんです。それで、着る服を。
智子:そうですか。それは大事な日ですね。こちらはいかがですか。白いシャツです。
愛美:うーん、白ですか。普通すぎませんか。
智子:では、こちらの花のワンピースは。かわいいですよ。
愛美:かわいい! でも、ご両親がびっくりしませんか。派手な子だなって。
智子:じゃあ、この紺のスカートと合わせてみてもいいですよ。
愛美:あ、いいですね。……でも、日曜日は少し寒いかも。
智子:上に何か着れば、大丈夫だと思いますよ。
(八時三分)
智子:お客様、そろそろ……。
愛美:あ、すみません! もうこんな時間。あの、最初のシャツ、もう一度見せてもらってもいいですか。
智子:白いシャツですね。はい、どうぞ。
愛美:これにします。二十分もショッピングして、最初のに戻っちゃって、すみません。
智子:よくあることです。それに、うちで一番売れているのも、そのシャツなんですよ。
