三十七個の抜け殻
夏休みの間、大樹は毎朝おばあちゃんの家の庭に出た。 桜の木の下や、垣根の葉の裏に、セミの抜け殻がついている。 茶色くて、軽くて、足の先が枝にしっかり引っかかっている。 大樹はそれを一つずつ取って、縁側に並べた。
八月の終わりには、抜け殻は三十七個になった。
「おばあちゃん、見て。三十七個」
「よく集めたねえ」とおばあちゃんは言った。 「そのセミがね、土の中に何年いたか知ってる?」
「一年ぐらい?」
「七年よ」
大樹はもう一度、縁側の抜け殻を見た。 小さい殻も、大きい殻も、みんな同じ形をしている。
「七年も土の中にいて、それから木に登って、鳴いて、二週間ぐらいで死んでしまうの」とおばあちゃんは続けた。
庭ではまだセミが鳴いていた。 うるさいと思っていた声が、その日は少し違って聞こえた。
夏休みの最後の日、大樹は抜け殻を捨てなかった。 お菓子の箱にそっと入れて、東京の家に持って帰った。 その小さな殻の一つ一つの中で、セミは七年生きていたのだ。
