野ばら(四)
冬は、やはりその国にもあったのです。 寒くなると老人は、南の方を恋しがりました。
その方には、せがれや、孫が住んでいました。
「早く、暇をもらって帰りたいものだ。」と、老人はいいました。
「あなたがお帰りになれば、知らぬ人がかわりにくるでしょう。やはりしんせつな、やさしい人ならいいが、敵、味方というような考えをもった人だと困ります。どうか、もうしばらくいてください。そのうちには、春がきます。」と、青年はいいました。
やがて冬が去って、また春となりました。 ちょうどそのころ、この二つの国は、なにかの利益問題から、戦争を始めました。 そうしますと、これまで毎日、仲むつまじく、暮らしていた二人は、敵、味方の間柄になったのです。 それがいかにも、不思議なことに思われました。
