野ばら(二)
ちょうど、国境のところには、だれが植えたということもなく、一株の野ばらがしげっていました。 その花には、朝早くからみつばちが飛んできて集まっていました。 その快い羽音が、まだ二人の眠っているうちから、夢心地に耳に聞こえました。
「どれ、もう起きようか。あんなにみつばちがきている。」と、二人は申し合わせたように起きました。 そして外へ出ると、はたして、太陽は木のこずえの上に元気よく輝いていました。
二人は、岩間からわき出る清水で口をすすぎ、顔を洗いにまいりますと、顔を合わせました。
「やあ、おはよう。いい天気でございますな。」
「ほんとうにいい天気です。天気がいいと、気持ちがせいせいします。」
二人は、そこでこんな立ち話をしました。 たがいに、頭を上げて、あたりの景色をながめました。 毎日見ている景色でも、新しい感じを見る度に心に与えるものです。
