頭が二つある鶴
陽菜と蓮は、小学校からの友達だ。 三十年たっても、会えばだいたい、どうでもいいことで言い合っている。
その日は、来週入院する共通の友達に送るために、二人で鶴を折っていた。 陽菜の家の台所のテーブルに、百枚入りの折り紙が広がっている。
「蓮、それ、逆」と陽菜が言った。 「最初は三角に折るの。四角じゃなくて」
「は? 三角なんて折らないよ。四角に折って、それから開くんだって」
「開かないよ。開いたら形が変わるでしょう」
「変わらない。三十年、これでやってる」
「私だって三十年、こっちでやってる」
「じゃあ、動画見よう」と蓮が言った。
「だめ。見たら、負けた気がする」
「意味わかんない」
二人はしばらく黙って、それぞれのやり方で折り続けた。 紙をこする音だけが、机の上でしていた。
先に折り終わったのは蓮だった。 次に陽菜。 二羽の鶴を、机の真ん中に並べてみた。
「……ちょっと待って」と陽菜が言った。
蓮の鶴には、頭が二つあった。 陽菜の鶴にも、頭が二つあった。 尾になるはずの部分が、どちらも上を向いている。
「同じ間違いしてる」と蓮が言った。
「うん」
二人は同時に、同じことを思い出した。 小学二年生の教室。 折り紙を教えてくれた、あの先生のこと。
「あの人、たぶん、折れてなかったね」と陽菜が言った。
