木の祭り(一)
木に白い美しい花がいっぱいさきました。 木は自分のすがたがこんなに美しくなったので、うれしくてたまりません。 けれどだれひとり、「美しいなあ」とほめてくれるものがないのでつまらないと思いました。 木はめったに人のとおらない緑の野原のまんなかにぽつんと立っていたのであります。
やわらかな風が木のすぐそばをとおって流れていきました。 その風に木の花のにおいがふんわりのっていきました。 においは小川をわたって麦畑をこえて、崖っぷちをすべりおりて流れていきました。 そしてとうとうちょうちょうがたくさんいるじゃがいも畑まで、流れてきました。
「おや」とじゃがいもの葉の上にとまっていた一ぴきのちょうが鼻をうごかしていいました。 「なんてよいにおいでしょう、ああうっとりしてしまう。」
「どこかで花がさいたのですね。」と、別の葉にとまっていたちょうがいいました。 「きっと原っぱのまんなかのあの木に花がさいたのですよ。」
それからつぎつぎと、じゃがいも畑にいたちょうちょうは風にのってきたこころよいにおいに気がついて、「おや」「おや」といったのでありました。
