三十年後の返事
田中:山本、こっちこっち。この木の下だよ。
山本:本当にここ?三十年も前だよ。
田中:覚えてる。この木の前でみんなで写真を撮ったことがあるから。ちょっとそのスコップ、貸してくれる?
(二人は交代で土を掘る。)
山本:あ、当たった。何か硬いものに当たったよ。
田中:ほら、あった。やっぱりここだ。
山本:うわ、箱が茶色くなってる。開けたら、中も濡れてるかな。
田中:……大丈夫みたいだ。手紙もちゃんと入ってる。はい、これ山本の。
山本:懐かしいなあ。字が下手だな、俺。えっと、「四十歳の山本くんへ。会社の社長になっていますか」。
田中:なってる?
山本:なってない。今も部長の下で働いてる。
田中:俺のも読むよ。「四十歳の田中くんへ。まだ山本くんと友達ですか」。
山本:……。
田中:それだけ。あとは何も書いてない。
山本:じゃあ、答えを書いて、また埋めようか。
田中:いいね。今度は十年後に掘ろう。約束だぞ。
