梅雨の窓
梅雨に入ってから、毎日雨が降っている。 洗濯物が乾かないので、部屋の中に干さなければならない。 傘を持って出ても、靴が濡れてしまう。 電車も混んでいるし、傘の水で床が汚れる。 窓の外はいつも灰色で、空はずっと暗いままだ。
前は、梅雨が嫌いだった。 外に出られないし、気分も晴れないからだ。 雨の日は、時間まで重く、長く感じられた。 毎年、六月になると同じことを思っていた。 「早く夏が来てほしい」と、いつも考えていた。 休みの日も、出かけるのをやめて、家の中でぼんやり過ごしていた。
でも、今日はベランダの窓を開けて、ずっと雨を見ていた。 急いで何かをしなければならない、という気持ちが、少しずつ消えていった。 雨の音は、思ったより静かだった。 開けた窓から、雨と土のにおいが入ってきた。 葉っぱの上で雨が光ったり、流れたりしていた。 急ぐ人もいなくて、町はゆっくり動いているように見えた。
ベランダの花は、雨をもらって、少し大きくなっていた。 雨が降らなければ、花も育たない。 道のあじさいも、雨の中で一番きれいに咲いている。 青や紫の花が、ぬれて、いつもより色がはっきりしていた。 晴れの日には見えないものが、雨の日には見えるのかもしれない。 雨が嫌いだったのは、ただ早く過ぎてほしいと思っていたからかもしれない。
そう考えるようになってから、雨の日も少し好きになった。 急がなくてもいいんだ、と自分に言ってみた。 晴れる日を待ちながら、今日は温かいお茶を飲む。 湯気の向こうで、窓ガラスに雨の線がゆっくり流れていく。 窓の外では、雨がやさしく降り続けている。 今は、その音を聞いているのも、悪くないと思う。
