駐車場のカラス
私は中野のビルの駐車場に毎朝来るカラスだ。 ここのごみ置き場には、たいていおいしいものがある。 特に火曜日がいい。 会社の人が弁当の残りを捨てるからだ。 袋を足で押さえて、口で穴を開ける。 それだけで朝ご飯ができる。
ところが先週から、袋の上に青い網がかかるようになった。 守衛のおじいさんが毎朝かけているのを、電線の上から見ていた。 網は重くて、どこを引っ張っても動かない。 三十分頑張って、私は諦めた。
次に見つけたのは、自転車のかごだった。 中にパンの袋が見える。 しかしそのかごには黒いふたが付いていて、穴に足を入れたら抜けなくなった。 あぶなく落ちるところだった。 これも諦めた。
しかしその日、私はいいことに気がついた。 おじいさんは十二時になると、駐車場のベンチに座ってあんパンを食べる。 そして食べ終わる前に、必ず袋を横に置いて、ゆっくり空を見るのだ。
今日、私は後ろの木の上で待った。 おじいさんが袋を置いた。 二秒あれば十分だ。
「あっ、こら!」
その声を後ろに聞きながら、私は屋上まで飛んだ。 網もふたも、私には開けられない。 だから、人間の手を利用する。 一番開けやすい袋は、人間が自分で開けてくれた袋だ。
