一年に一度の健康診断
日本で働いている人の多くは、一年に一度、会社で健康診断を受ける。 これは会社が親切でしていることではなく、法律で決められた義務である。 従業員に受けさせるのは会社の責任で、費用も会社が出す場合がほとんどだ。 だから、社員のほうも「今年はやめておく」という選択はしにくい。
検査の内容は、どこの会社でもだいたい似ている。 身長と体重を測り、血圧を調べる。 視力と聴力の検査があり、尿検査と血液検査もある。 胸のレントゲンを撮ることも多い。 四十歳を過ぎると、胃の検査や、おなかまわりを測るいわゆる「メタボ健診」が加わる。 全部で一時間から二時間ほどで終わるが、前の日の夜から何も食べずに行かなければならない。 血液の数値が正しく出るようにするためだ。
結果は、二週間から一か月ほどして、紙で届く。 数字がずらりと並び、その横に「異常なし」「経過観察」「要再検査」といった言葉がつく。 ここで大事なのは、一つ一つの数字そのものよりも、去年やおととしと比べてどう変わったかである。 同じ数値でも、五年かけて少しずつ上がってきたものと、今年だけ高く出たものとでは、意味がまったく違う。
問題は、そのあとだ。 「要再検査」と書かれていても、体はどこも痛くないので、封筒を引き出しに入れたままにしてしまう人が少なくない。 忙しくしているうちに季節が変わり、次の健康診断の案内が届いて、ようやく思い出す。 しかし、食事や運動などの生活習慣が原因の病気は、痛みが出るころにはかなり進んでいることが多いそうだ。
健康診断に意味があるのは、まさに、本人が何も感じないうちに小さな変化を見つけられるからこそである。 具合が悪くなってから病院へ行くのは、誰でもする。 何ともない日にわざわざ体を調べるのは、この仕組みがあるからだ。
毎年届く紙は、捨てずに一つの封筒にまとめておくといい。 十年たてば、それは自分の体の十年分の記録になる。 健康診断は、一日で終わる検査ではなく、少しずつ書き足されていく記録なのである。
