この家で一番の年上
マルは十一月三日生まれだ。 十二年前、妻の実家で生まれて、米田の家に来た。 米田の家では、毎年これを祝う。
その日、妻はケーキ売り場に寄って、二つ買ってきた。 人間のと、犬用のと、別々に。 チョコレートは犬に危険だから、マルのには何も乗っていない。
「マル、誕生日おめでとう」と娘が言った。 マルには分からない。 分かるのはにおいだけで、犬用のケーキを噛まずに食べてしまった。
「十二歳か。人間の年にすると、いくつだ」と米田が聞いた。
娘が計算した。 七をかけると八十四。 しかし、犬の年齢は体の大きさで変わるらしく、小さい犬で数え直すと、六十四になった。
米田は今年四十九になる。 八十四でも、六十四でも、マルの方がずっと年上だ。 この家で一番年をとっているのは、床で寝ている犬だった。
最近、マルは階段を上るのが遅い。 妻は太っただけだと言うが、米田はそう思わない。
その夜、米田はストーブの側の一番いい場所を空けて、マルを呼んだ。 年上を先に座らせるのが、この家の決まりだからだ。
