猿かに合戦(二の二)
かにはうらやましそうに下でながめていましたが、
「おい、おい、自分ばかり食べないで、早くここへもほうっておくれよ。」と言いますと、猿は、「よし、よし。」と言いながら、わざと青い柿をもいでほうり出しました。 かにはあわてて拾って食べてみますと、それはしぶくって口がまがりそうでした。
かにが、「これこれ、こんなしぶいのはだめだよ。もっとあまいのをおくれよ。」と言いますと、猿は「よし、よし。」と言いながら、もっと青いのをもいで、ほうりました。
かにが、「こんどもやっぱりしぶくってだめだ。ほんとうにあまいのをおくれよ。」と言いますと、猿はうるさそうに、「よし、そんならこれをやる。」と言いながら、いちばん青い硬いのをもいで、あおむいて待っているかにの頭をめがけて力いっぱい投げつけますと、かには、「あっ。」と言ったなり、ひどく甲羅をうたれて、目をまわして、死んでしまいました。
猿は、「ざまをみろ。」と言いながら、こんどこそあまい柿を一人じめにして、おなかのやぶれるほどたくさん食べて、その上両手にかかえきれないほど持って、あとをも見ずにどんどん逃げて行ってしまいました。
猿が行ってしまったあとへ、そのときちょうど裏の小川へ友だちと遊びに行っていた子がにが帰って来ました。 見ると柿の木の下に親がにが甲羅をくだかれて死んでいます。 子がにはびっくりしておいおい泣き出しました。 泣きながら、「いったいだれがこんなひどいことをしたのだろう。」と思ってよく見ますと、さっきまであれほどみごとになっていた柿がきれいになくなって、青い青いしぶ柿ばかりが残っていました。
